新しい働き方や働き方改革が企業や組織にとって重要なポイントとなる昨今のビジネスシーン。貴重な時間を最大限有効活用するための生産性向上や業務改善は、達成しなければならない課題だと言えます。そこで今回は業務改善のためのフレームワークとして知られる「ECRS」について解説します。ECRS とは何かを知って、業務の最適化を目指しましょう。
結果が出る業務改善ツールを導入するECRS とは、Eliminate (排除)、Combine (統合)、Rearrange (順序入れ替え)、Simplify (簡素化) という英単語の頭文字を取り作られたビジネス用語で、日本語では「イクルス」と呼ばれます。
ECRS はこの 4 つの要素を順番に検証し、業務から無駄な部分 (ムリ、ムダ、ムラ) を取り除いていく手法です。この 4 つのポイントを「原則」として考えることから、「改善の 4 原則」や「ECRS の 4 原則」などと呼ばれることもあります。主に生産管理や製造の現場、たとえばトヨタなどで浸透していましたが、実際はさまざまな業種や部門、部署で活用できる考え方が根底にあるフレームワークとして、現在では多種多様なシーンで導入されています。
では 4 つの原則について、詳しく見ていきましょう。ECRS の進め方は、これから紹介する 4 つの原則を順番に実践していくだけです。
まずは現状の業務の流れやワークフローを客観的に見て、不要なものがないかを検証し、洗い出しましょう。「取り除く」もしくは「除去する」ステップです。
ただなんとなく慣習で業務の間に挟んでいた報告書作成や承認リクエスト、定期的な会議など、本当に必要かどうかを問いかけます。排除したときに影響が出る業務がないかどうかを確認し、大丈夫なようなら削除、もしくは省略しましょう。
ECRS の原則、第一項目目に挙げられるこの「排除」のステップは、実は最も重要だと言われるポイントです。というのも、この「排除」が上手くいけば、直接的なコスト削減につながるからです。その業務を行っていたメンバーの人件費だけでなく、そこで費やされていた時間も節約することが可能となり、大きな業務効率化がもたらされます。
二つ目のステップは、Combine です。元々は複数の業務、タスクだったものをひとつにまとめ、プロセスが複雑化するのを防ぐ原則です。
業務を見返してみると、内容が似たものがありませんか?そのような類似性のあるタスクをひとつにまとめれば、無駄な手間を省くことができます。たとえば、出席メンバーがほぼ同じ会議が週に複数回開かれていませんか?それを 1 回で済ませることができれば、時間と手間の大きな節約となります。
このステップで、一体化できる業務を探すうちに、分けたほうが効率よく進むだろうタスクが見つかるかもしれません。もしそのような業務があるなら、分離しましょう。一人の担当者が行っていた業務は、もしかしたら二人で担当したほうが効率よく進む場合もあるかもしれません。そのようなケースを見つけ、改善するのも、この「Combine」で行います。
3 つ目の原則は「Rearrange」です。この原則は、業務の作業順序や担当者を変更したり交換したりといった再整理を検討します。
A→B→C の順番で行っていた業務プロセスを A→C→B と順番を変えただけで作業効率がアップするケースも存在します。順番だけでなく、その業務を行う担当者や行われる場所など、入れ替えたり交換したりすることで効率化できないかどうかを検討してみましょう。
製造業の現場でよく行われるのが、機材や設備の配置換えです。オフィスワークの場合でも、たとえばデスクの配置を変え、特定のチーム同士のコミュニケーション活性化を図ったりといった再配置も可能でしょう。生産性が上がるだけでなく、コミュニケーションの質が上がることでコラボレーションがさらに活発になることも期待できます。
円滑な共同作業のための戦略、テクニック、インサイトなど、世界トップレベルの効果的なコラボレーションを支えるすべてをご紹介します。
ECRS 最後の原則は「Simplify」です。日本語では簡素化や単純化、簡易化と呼ばれるこの原則では、複雑化したプロセスや業務がないか洗い出し、よりシンプルに調整できないかを検討します。
たとえば、毎日の日報作成に時間が取られているなら、ワークマネジメントソフトウェアのようなデジタルツールを導入して、作業の自動化を目指しましょう。テンプレートを活用して、作業をマニュアル化し、業務の標準化を図るのも有効です。業務改善だけでなく、品質の安定化や作業が属人化するのを防ぐ効果もあります。
ECRS フレームワークを導入するメリットとは、何でしょうか?前項で挙げたものも含め、一覧にまとめてみます。
業務を見直すことで改善できる
業務の質が向上する
コストを削減できる
業務の属人化を防止する
不要なトラブルを回避できる
新たな課題を発見できる
コミュニケーションが活性化する
働きやすい環境が整う
この ECRS は、とりわけ新規事業、スタートアップ企業には必須の原則だと言われます。その理由は前述したメリットがあるからで、とくに不要なコストを削減したり、限られたリソースで生産性を最適化したりといった効果が期待できることが大きいと言えます。
では ECRS はどのように実施すればより効果的なのでしょうか?ECRS フレームワークの効果を最大限引き出すためのヒントをご紹介します。
ECRS は少人数チームで導入してももちろん効果があります。しかし、さらに大きな規模、もしくは全社規模で一斉に行うことで、ビジネスに大きく影響を与えるような効果を期待できるようになります。
業務改善と効率化は、組織規模で取り組むべき課題です。そこで、従業員の認識を統一するためにも、経営戦略に取り入れることで、個人レベルやチームレベルでそれぞれが個々に行うのではなく、さらに大きな単位で改善を目指すことが可能になります。
ECRS フレームワークを用いるときは、その目的を明確にしましょう。「業務を改善すること」は目的ではありません。改善することで何を達成したいのかが具体的に定まっていないと、そこまでのプロセスも曖昧になります。「XX のプロセスを改善し、○○ かかっていた作業を △△ にまで短縮する」などといった具体的な目的を掲げるようにしましょう。
ECRS に対応できるツールを導入することも、この手法が効果的に働くためのコツとなります。削除したり統合したタスクをステークホルダー全員に効率的に周知させたり、メンバー間のコミュニケーションを最適化できるツールを選んで採用してみましょう。
ECRS は理論だけでなく、実際の業務改善でも成果を上げています。ここでは、ムダの排除や業務の統合、簡素化に取り組んだ企業の事例を紹介します。
新潟県の部品加工メーカーであるテック長沢では、M&A を含む急成長にともない社内のコミュニケーション量が以前の 2.5 倍に増加し、業務のムダが表面化していました。とくに同じ議題が繰り返される役員会議は、1 回あたり 6〜7 時間に達することもありました。議題と情報を一元化して会議のムダを排除した結果、役員会議や 5S 活動、生産工程管理など幅広い業務が加速しました。テック長沢の導入事例を読む。
グローバルな金融機関である Morningstar は、複数のツールに分散していた業務を一元化し、重複するシステムを排除しました。さらに定型的な受付業務を自動化して簡素化したことで、リサーチチームだけで年間およそ 14,976 時間を削減し、60 万ドル以上のコスト削減を実現しています。Morningstar の導入事例を読む。
ECRS とは何か、その意味と 4 つの原則、導入のコツをご紹介しました。
ECRS は製造業だけでなく、サービス業や営業などでも十分に有効なフレームワークです。業務改善と仕事の生産性向上を目指し、最適な方法で導入してみましょう。
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